沖縄は独自の文化と歴史を持つ場所であり、その文化体験は訪れる人々にとって特別なものとなります。OLS Journalでは沖縄でできる代表的な文化体験である、やちむん体験と琉球グラス体験について、2回にわたりお届けします。まず今回は、やちむん体験について紹介していきます。

やちむんとは

やちむん(焼き物)は、沖縄の伝統的な陶器で、その歴史は16世紀から17世紀にかけて琉球王国時代に始まりました。やちむんは、沖縄方言で「焼き物」を意味し、そのデザインは、素朴でありながらも大胆なものが多く、沖縄の自然や生き物をモチーフにしたものがよく見られます。例えば、シーサー(沖縄の守り神)や波、亀甲模様など、沖縄独自の文化や風土を反映した模様が多く使われています。これらのデザインは、力強さと素朴さを兼ね備え、やちむんの魅力を引き立てています。
また、やちむんは、基本的に手作りで作られるため、ひとつひとつの作品に作り手の個性が現れます。そのため、同じデザインでも微妙に異なる表情を持つことが多く、手作りならではの温かみを感じることができます。この温かみは、やちむんが多くの人々に愛される理由の一つでもあります。

やちむんの起源と発展

やちむんの歴史は、15世紀に琉球王国が中国、朝鮮、日本、東南アジアと交易を行っていた時期にさかのぼります。琉球王国は、中国から陶芸技術を学び、それを基に独自の陶芸文化を発展させました。16世紀には、薩摩藩による侵攻後、日本から陶工たちが琉球に移住し、その技術が琉球の焼き物に大きな影響を与えました。
1609年、薩摩藩による侵攻の後、琉球王国はそれまで分散していた各地の窯を現在の那覇市壺屋に統一しました。これにより、壺屋焼(つぼややき)という焼き物が発展し、やちむんの生産が本格化しました。この時期、やちむんは主に琉球国内の需要を満たすために生産されていましたが、中国や東南アジア、日本にも輸出され、その品質の高さが評価されました。
現在でも、やちむんは沖縄の重要な伝統工芸品として親しまれ、特に読谷村や那覇市の壺屋地区は、やちむんの生産が盛んな地域として知られています。これらの地域では、多くの陶芸家たちが伝統的な技術を守りながら、現代の感性を取り入れた作品を生み出しています。

やちむんの特徴

やちむんは、その厚手で重厚感のある作りが大きな特徴です。この作りは、沖縄の風土に適したものであり、強い風や台風などの気象条件に耐えるためのものです。また、やちむんは比較的重いことから、どっしりとした安定感があり、日常的に使用する器や花瓶として適しています。
やちむんのもう1つの特徴は、自然素材を使用した釉薬です。やちむんに用いられる釉薬は、沖縄の自然の色を反映しており、代表的なものに以下の種類があります。

・鉄釉(てつゆう): 鉄分を含む釉薬で、深い黒色や茶色の色合いを生み出します。力強く落ち着いた印象を与える色合いです。
・緑釉(りょくゆう): 銅を含む釉薬で、鮮やかな緑色を呈します。この色は、沖縄の豊かな自然、特に青々とした植物を連想させる色です。
・白釉(しろぐすり): 白色の釉薬で、明るく柔らかな印象を与えます。シンプルでありながら温かみのある色合いが特徴です。

やちむんの原点となる「壺屋焼」には、釉薬をかけずに1,100℃前後で焼き締める荒焼(あらやち)もありますが、現在は絵付けや線彫りなどで文様付けし、釉薬をかけて1,200℃以上の高温で焼き上げる上焼(じょうやち)が主流で、広く使われています。

やちむん体験の内容

やちむん体験では、参加者が自分の手で器や小物を作り上げることができます。一般的にやちむん体験では以下のいずれかの体験をすることができます。

手びねり体験: 手で粘土を成形して器や小物を作る体験です。手びねりは、初心者にもおすすめで、陶芸の基本的な技術を学びながら、世界に一つだけの作品を作ることができます。作品は、後日焼き上げられて、完成品として受け取ることができます。

ろくろ体験: 電動ろくろを使って器を成形する体験です。ろくろを使うことで、均一な形の器を作ることができ、回転の力を利用して粘土を成形します。やや技術が必要ですが、インストラクターが丁寧にサポートしてくれるので、初めての方でも安心して参加できます。

絵付け体験: あらかじめ素焼きされた器に、絵付けを行う体験です。沖縄の自然や伝統的な模様を参考に、自分だけのデザインを描くことができます。色鮮やかな釉薬を使って絵付けを楽しみ、焼き上がった作品は美しいインテリアや日常使いの食器として使えます。

体験場所のおすすめと体験方法

・読谷村のやちむん工房: 読谷村には多くのやちむん工房が集まっており、観光客が陶芸体験を楽しむことができます。特に「読谷焼窯元村」は有名で、複数の工房が一堂に会し、伝統的な技法でやちむんを制作しています。

・壺屋やちむん通り(那覇市): 那覇市にある壺屋やちむん通りは、やちむんの歴史が感じられるエリアで、いくつかの陶芸工房で体験が可能です。壺屋は、17世紀に琉球王国時代の窯業が統一されてから発展したエリアで、現在も伝統を守りつつ現代的な作品も生み出しています。

やちむん体験は、多くの工房で事前予約が必要です。所要時間は、体験内容によって異なりますが、1~2時間程度が一般的です。また体験内容によっては、体験後の作品の焼成に時間がかかるため、完成までに数週間を要することが多く、作品は後日郵送されることもあります。

やちむんは、沖縄の自然と文化、そして職人たちの技術が融合した伝統的な焼き物であり、その陶芸体験は、伝統的な沖縄文化を深く感じることができる素晴らしい機会です。自分の手で作った作品は、沖縄旅行の思い出として長く楽しむことができますので、沖縄を訪れる際には、やちむん体験に参加して、独自の美しい陶器を作ってみてはいかがでしょうか。
次回は沖縄のもう一つの代表的な文化体験、琉球ガラス体験についてご紹介していきます。記事のリクエストや沖縄について気になることがあれば、ぜひお気軽にご意見をお寄せください。それでは次回もお楽しみに!