物心がついた頃から絵が好きだった。大学卒業後、銀行員として働き始めるも、夢を諦められず絵を描き続け、2015年 作品に興味を持った会社から契約オファーを受け、画家として専属契約を結ぶ。2016年 初の個展を開催、独立。彼女のアートワークの特徴である、色鮮やかでダイナミックな表現は鑑賞する人々の心を魅了する。2020年 オリオンビールドラフト「首里城再建支援缶」や読売ジャイアンツ「首里城再建支援チャリティーグッズ」等にもデザイン提供。沖縄と米国を拠点に活躍されている、画家 ARISA C.Millerさんにお話を伺いました。

撮影場所:AIEN COFFEE & HOSTEL
[編)編集部 / A)ARISA ​C.Miller さん]

編)おはようございます。今日はよろしくお願いします!
このARISAさんが手掛けられた絵を背景に取材できればと思ってここを選びました。

A)ありがとうございます!こちらこそ、よろしくお願いします。

編)短い時間ですが、いろいろお聞かせ下さい。まずはARISAさんのアートとの出会いから。。。

A)そうですね、幼少期から絵が好きで、物心がついた時には何かしら絵を描いていました。

もちろん最初から、本格的な画材があったわけでもなんでもなく、道具はとにかくそこにあるものでチラシの裏とかにクレヨンで絵を描いて遊んでいました。親が仕事で忙しい時など一人で遊んでる時間が皆さんもあったと思いますが、親の職場の片隅で1畳ほどの小さなスペースでじっと待っている間がお絵描きの時間でしたね。物理的なスペースとしては狭かったですけれど、頭の中では広くて自由な想像の世界に浸っていたので窮屈ではありませんでしたが。

編)すべてが揃っていて持て余して何をしていいか分からないよりも、制限がある方がそこで何とかしようとして人間はよりクリエイティブになる、ということも聞いたことがあります。こうやって幼少期の過ごし方が、アーティストの育成にどう影響するかみたいなことには興味ありますね。ちなみに、テレビゲームとかでは遊んでいましたか?

A)うちにはファミコンやプレステなどはなかったので、そのおかげで今でもデジタルよりアナログの方が馴染みがありますね。

参考:読売ジャイアンツ「首里城再建支援チャリティーグッズ」デザイン by ARISA ​C.Miller

こうやって、メールや作品ポートフォリオを紹介するためにiPadは持ち歩いてはいますが、アート創作においてデジタルに頼っているわけではありませんし、むしろアナログにかける想いがありまして、アナログにしかできない自然なニュアンスだったり、想定していなかったハプニングも作品のインスピレーションになるので面白いんです(ペンキの缶を丸ごと倒してしまって、地面を一面真っ赤に染めちゃったこともありますが、それはただの粗相だったので、後でちゃんと地面と同じグレイで塗りなおしましたが)

編)何でもインスピレーションになるのは素敵ですね!地面のグレイ塗りはさすがに大変そうですが。笑
例えば、パソコンでしたら簡単にリセットできると思いますが、アナログではそれができないという緊張感はありますか?

A)そうですね、完全にクライアントのオーダーとして絵の完成形が決まっているようなものや時間制限のあるイベントですと、もちろん正確さが求められますよね。それで間違った場合には、画材によっては塗り重ねられますが、厚塗りになると絵具が盛り上がった部分は立体的に光の反射やニュアンスも変わってしまいますし、色が混ざるので最初に筆を入れたところが乾くまで待つ時間をロスしますよね。

お店とかの現場でしたら、営業時間による制限もありますし、ライブペイントの場合はイベント時間中に完成に持っていけるよう時間配分も大事です。頭の中で描く順番を組み立てておくことはできますが、ちょっと思ったのと違う線を描いてしまっても、パソコン作業のように1クリックで戻る!みたいなリセットはできないですから

編)制限時間もある中での一発勝負みたいな?

A)そういったアナログならではのいい緊張感も含めて楽しめますね。数時間のイベント中に描き終えるものですと、クライマックスの時間帯よりも前に早くから完成形=答えが分かってしまったら観客としては面白くないですから、舞台演出としてのタイムテーブルも意識しますね。イベントは1度限りのものですから、時間を巻き戻したり、イベントをやり直すこともできないですし。

編)ちなみに、作品に取り組む時のプロセスとしては、どんな感じなのでしょうか?

A)例えば大きな作品を描かせていただくような場合には、一度スケッチブックに筆で描いてからスマホで写真を撮っておいて、それを見ながら実際のキャンバスに描いていきます。大きな絵というと、だいたい建物の壁や屋上、雨風もあったり、脚立に登って高所作業するところにスケッチブックは持って上がれないですよね。

また、描き始めてから完成までに何日もかかることもありますが、スマホはいつも持ち歩いてそばに置いておけるので、撮影した絵を参照しながら制作しています。

作品としてはアナログで始めアナログで完成ですが、作品の記録保存のためや、またはデジタル納品が必要な場合に、アナログで制作してからデジタルにトレースする程度で使用しています。

編)詳しくありがとうございます。アナログかデジタルかを問わず、ARISAさんにしかできない作品性、キャラクターや筆のタッチなどは変わらない価値だと思いますよ。アーティストも鑑賞者も生身の人間ですから、どんな時代になってもアナログで制作することの価値も変わらないか、より貴重なものになるのではないでしょうか。

A)そう信じてやり続けたいですね。

編)ほんと、絵を描くと一口に言っても、いろんなパターンがありそうですね。

A)そうですね、冒頭にご紹介いただいたように商品に載せるデザインとして提供させていただくものもありますし、布キャンバスで油絵、アクリル絵を製作したり展示会をすることもあります。または、お店などの内外装デザインとして描くお仕事や、またそれをショーイベントとしてライブでペイントする案件もありますね。

刺激的なものではエンターテイメントショーとして仕掛けるイベントで、お酒も伴うソーシャルな環境でお客様も盛り上がる音楽をかけながら、ブラックライトで光る特殊塗料を使ってのライブペイントもよくやっていましたが、またやりたいですね。 https://www.youtube.com/embed/plq0qT3El4g

こちらは、初めて開催した2016年エグジビジョンのプロモーション映像ですが、自分を奮い立たせて独立し、まだ私のことを知られていない世の中にダイレクトに自分のアートの価値を問う瞬間でした。イベント集客もショーの準備も家族・友達やあらゆる方々にも助けてもらいながら、いろいろな所への挨拶周りもしっかりやって、このイベントの先に何がどうなるかもわからず走りだしていた頃でしたが、今でも鮮明に思い出しますね。

この頃があったから今があるなと。

2017年には自主製作イベントとしてヒルトン沖縄北谷リゾートで開催したシャンパンとアートとチョコレートのイベント「QUEST」では、たくさんの方の目に触れていただき、数々のご縁をいただけて、現在の絵のお仕事にも繋がってきています。自分が楽しいと思うことをエンターテイメントとして提供でき、さらにこうやって未来に繋がっているので、やってよかったなと後からでも実感しています。

編)ライブで魅せるパフォーマンスとして大変な部分はどのようなところですか?

A)ショーとしての演出を組み立てて何度も練習しておいても、本番となると全部リハーサルどおりに行くことはないですから、現場で即興することもあります。イレギュラーなことは発生するもので、その瞬間は大変と言えば大変ですが、毎回が完璧なコピーではないからこそのことで、アナログのライブでしかできないアートの醍醐味ですね。

編)たとえば、こちらの壁の絵ですが、アートに込められたメッセージとか何かそういうものはあったりしますか?

A)いい質問ですね(笑
実は人の絵を描いているけど、人の絵を描いている感覚はないんです。絵を拡大していくと、局所では点を描いている感覚で、インクジェットのプリンターと同じで、点をたくさん細かく打っていくことで解像度を上げていく感じで描いています。それで、これは個人的な考えですが、アートは鑑賞者それぞれが絵と対話していただいて、あれこれ考えること自体が絵を楽しむことの醍醐味だと思っていまして、例えば絵の一部分を見ながら、ここが目に見えるとか、どんな表情に見えるとか、大好きだったおばあちゃんの顔に似てるとか、そう見える人にはそう見えるので、絵は人それぞれが感じ取るものでいいと思っています。

そのため、これが答えだとかいうひとつの正解があるのではなく、絵の意味をそれぞれに模索してほしいと思います。

編)いいですね~、禅寺とかにある枯山水の楽しみ方と同じだなと思いました。砂と石だけで作られた庭の模様や岩などを、座して何時間も見つめながら、頭の中の想像で岩にも命を見出したり、物質を登場人物に見立てて物語や宇宙まで想像するなど、そうやって見る側の鑑賞眼を育てていくのもアートができることですよね。

A)アート製作以外にも、実は基地の中で教室を開いて教えることも最近よくあるのですが、それぞれの生徒さんが自由な感性で描くものを見るのも楽しいですよ。

決まった答えを教えてそのままを覚えてもらうことよりも、皆さんが表現力や幅を広げられるような、課題の設定を心掛けています。筆だけでなく手も使って描いてもいいですし、とにかくアートにルールはなく自由です。白黒つけてしまわないことが唯一のルールかなとも思います。

編)教育といえば、ARISAさんは芸大ではなく、経済学の専攻で卒業され、そして画家に、という特殊な展開ですよね?

A)たしかにそうですが、教科書やカリキュラムなどのフレームワークがある中で学問として学ぶと、何かと理論づけて説明はできるようになると思いますが、その分、教えられた枠や先入観、限界も知ってしまって、自分の作品創りにもリミットができてしまうのも避けられないですよね。その分、学問として学んでいないからこそ、無知だから行き詰らないですし、また、無知は無限を知っているとも思っています。

編)とても深いですね。ちなみに、銀行に勤められ、それでもやっぱり画家という道に進んだ背景には、どのような心境の変化があったのですか?

A)もともと画家になりたいとずっと思っていましたので、変化というよりは変わらなかったわけです。結局は心の声に従わされたというような感じです。それを後押ししてくれたのは、学生時代にちょっとショッキングなことがきっかけにあり、、、私の父が膝の骨に癌を患い、一年ほど入院をしていたのですが、その同じ病室に私より一つ下の子が同じ病気を患って入院していたんですね。その子にはたくさん夢があったのですが、脚の骨にできた癌の治療をしていくうちに、結局はそのままだと命の危険があって脚を切断せざるを得なくなり、義足を付けての生活になって、車を運転したいという夢も叶わなくなってしまったんです。そんな過酷な現実も目の当たりにしていました。

さらに、私が卒業旅行でパリに行って帰ってきた時には、その子はもう亡くなっていてお別れもできませんでした。

就職活動で悩んでいた頃、その子にYOLOという言葉を頂いたのですが、英語でYou Only Live Once=人生は一度しか生きられない、という意味で、あれこれ悩んでいるうちに気が付いた時には時間がたってしまって、状況も変わりタイミングを逃すこともある。ということを教えてくれた言葉なんです。そして、本当にやりたいこともできなくなることだってある。良いことも悪いことも、どんなことでも起こりえる可能性があるのが現実なのに、本当にやりたいことにチャレンジしていない言い訳を実は自分が作っていて、やりたいことをやっていない自分のままではいられなくなったんです。

逃れられないようなどうしようもない理由でも何でもないのに、手軽に言い訳を見つけたり作ったりして、やりたいことをやっていない自分に対して、「言い訳ができることにすら感謝しろ」とも思ったのでした。

自分が経済学を専攻したからとか、就職活動で銀行から内定をもらったから働くとか、そんなのはぜんぶ言い訳でした。
何をしたいか意思があって、五体満足に行動できるのに、なぜ画家として活動していないのか?と思ったんですね。

編)人生は短いし一度きりですが、自分の意志ではなく、何かわからないまま現実の流れで生きている人も多いかもしれませんね。変化を起こすことは勇気のいることですが、ARISAさんが大事なことに気付けて行動を起こし人生を大きく変えてきたのを見れた周りの人々には勇気を与えていると思いますよ。

A)勇気も必要ですが、頭の中で考えている思考がすべてかもしれない、とも思いましたね。銀行で働いている頃にも、「思考は現実になる」「思考を持つと、それは現実になる」というような内容の本を読んでいたのですが、「思考」とはつかみどころのない感情的な何かというだけでなく、量子力学的にもこの現実を作っているのが自分の思考だということにも不思議とすんなり納得できました。

私はやっぱり銀行員ではなく画家だと確信した時に、うまく物事がトントン拍子に進み始めたのですが、銀行の取引先で、画家を探されていた方とちょうど知り合ったんですね。こうやって機会が訪れるんだなと思って、チャンスを逃さないように飛び込みました。

編)卒業旅行に行かれたパリでは、どのような所を見に行きましたか?

A)銀行での就職が決まってからでしたが、アーティストになることへの未練を断ち切るためにルーブル美術館に行きました。というのも、巨匠たちの作品をこの目で見て、自分が描く作品とはいかにレベルが違うかを目の当たりにすることで、画家としての人生もここで諦められるはずだったのですが、「自分でもできるんじゃないか?」と思えてしまったんですね。

編)なかなかそう思えるのはすごいことなので、きっとその自信は本物ですよ!
それが分かっただけでものすごく有意義な旅でしたね!

A)とは言っても、そう簡単にはすべての物事は進みませんでしたが、

編)何かあったんですか?

A)その直感としか言い様のない自信を得た次の日にも、晴れた気分でルーブル美術館の建物を訪れたのですが、何かのサインなのかな?とも思えるようなアクシデントに遭遇してしまいまして。。。

編)はい、

A)美術館の目の前で石畳でつまづいて転んでしまいまして、前歯が折れたんですよ!
それで、病院に搬送される救急車の車窓からアートな街並みを眺めていたら、なんと自分の乗っていた救急車も事故ってしまって。。。しかも、どうにか搬送された先の病院には歯科や口腔外科はないし、救急車も動かないしで、本当に参りました。結局は自分で地下鉄に乗って処置していただける病院にたどり着けたましたが、画家になるのも簡単じゃないな、と面食らいましたね。

編)すごい試されましたね~

A)でも、こんな自虐ネタを笑い話にしつつも、前歯が折れたくらいでは負けない気持ちが持てて、いろんな壁を突破できたのかもしれませんね。笑
それで、ルーブル美術館前のどこかに前歯を残してきたわけですが、数年後にまた行った時には見つけることはできませんでした。前歯と引き換えに、アーティストという人生は見つけることができましたので、それで十分ですが。

編)ポジティブな姿勢ですね!それで実際にいま現在こうやってアーティストとして活躍、実績を積まれていて、つい笑ってしまいましたが、とても面白い人生ですね。笑
ご結婚もされて、お子様も大変お元気そうですし、

A)ありがとうございます。いまは母親業も忙しくなりましたが、子供こそが創造物、アートだなと感じます。
子供ができたおかげで、優先順位が明確になったというのはあります。意識的に時間を作らないと絵も描けないですから、その分アート製作に専念する間はとても凝縮された時間を過ごせています。アトリエに息子も連れて行きますが、息子と一緒に描くことも、とても面白いですね。

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編)結婚と子育てが始まってから、アート製作における考え方や、作品性に影響はありましたか?

A)もちろん大いにあると思いますよ。これまで自分中心に物事を進めていてもそれがアーティストとしての性分としてはそうすべきでしたが、今は自分の前後も考えることが多くなりました。これまで、自分の親やそのさらに親世代がつないできてくれたから自分がいる、それが命ですから、私も次の世代、未来にどうつなげるかしっかり考えるようになりました。

自分の存在だけでなく作品もあることで、それを見てくれる人の未来にどう影響するか。。。さらに、100年もしないうちに自分がいなくなった後にも、自分のアーティストしての存在や作品としては残るのか?そんなことも考えるようになりましたね。

編)残したいですか、それとも

(少しの間。未来に想いを馳せながら)

A)残ってほしいですね。

編)そのためには、どうしていきますか?

A)そうですね、、、このインタビュー取材をしていただけて、気づきができました!
作品が未来に残っていくためにすべきこと、これからしっかり考えたい部分ですね。

編)絵の鑑賞はまるで枯山水の楽しみ方のよう、という話の時に少し触れようとしましたが、ARISAさんの作品にはよく宇宙を思わせる絵がありますよね

A)宇宙のことは、ものすごく興味がありますよ!
人間が意識してないか、意識できない、可視光として人間の目では見れないだけで、実際の70パーセントは見えてないらしいですし。感知できる能力がないだけであって、存在していないわけではない。そういうことを考えるだけで面白いですよね。

絵もどこまで行っても未完成であって、作った人が答えをすべて提供するのではなく、鑑賞者がいることによってはじめてアートが完成するもので、宇宙やこの現実世界も同じことだと思います。

編)まさに量子力学の解釈そのものですね!

A)昔は、宇宙とか量子力学、引き寄せの法則とかってスピリチュアルなちょっと訳の分からない類の話として思われることもありましたが、最近では数年前より、キーワードとしてより頻繁に聞くようになりましたし、宇宙もかなり一般人にも近い存在になりましたよね。

編)そのあたり、奥深いテーマですし、また掘り下げたい内容ですね。
ところで、最近はお仕事はどういう感じですか?

A)現在はアーティストとして「THE ART by paddle design company」に参画していまして、国内だけでなく世界とも接点を多く持てますし、クライアント企業様からも信頼してもらいやすくなり、より大きな舞台が広がってきましたので、どんどんチャレンジしていきたいですね。
いずれにしても、最も自分らしさを出せる特徴的な演出としては、ブラックライト作品は続けていきたいですね。
ただ、コロナの影響があったことは確かですし、イベント等はなかなかこれまでどおりとはいかない部分も多いですが、出かけなくとも楽しめるスマホなどのコンテンツ市場は伸びたはずですから、そういう意味ではアートに触れられる機会は拡大しましたよね。

編)最後に、生まれ育った沖縄に対する特別な想いなどもお聞かせいただけますでしょうか?

A)沖縄は、昔から米軍基地があって、アメリカとの距離感も近く文化的にも融合している土地柄ですが、私はそんな沖縄で国際結婚となりましたので、島内外や国内外の視点もいろいろまんべんなく取り込めるようになったかなと思います。
沖縄にずっといるだけですと、ひとつの環境でしか通用しない常識だけで生きていたかもしれませんが、おかげ様でそういった文化的な多様性にも気が付けるようになったかと思います。

そして、絵を描き、教室や展示イベントを仕掛けることで、アートによって人々が異文化に触れ合える場も提供でき、両者をつなげられる立場としてアートが役立つという価値にも気が付けたかと思います。

こちらは、うちなーんちゅ(沖縄の人)の心、首里城の再建に貢献したくオリオンビール首里城再建支援缶にデザイン提供させていただいた作品ですが、それと、沖縄中部にある米軍フォスター基地内のMARINE GIFT SHOPの壁に描かせていただいたウォールアートとのコラボ写真で、オリオンビールさんがインスタにアップして下さったものです。例えばこんな感じで、アートがいろんな壁を越えた橋渡しができる好例かと思います。

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参考:オリオンビール ドラフト「首里城再建支援缶」デザイン by ARISA C.Miller

アートという題材を使って、このちゃんぷるー文化の沖縄で、いろんなモノやコト、ヒトをつなげていけたらいいなと思います。1人のアーティストだけではできることも限られていますが、こういったメディアやSNSなどでアートのことを取り上げてくれることで、画家・アーティスト・パフォーマーとしての需要を作ってくれるのでとても嬉しいです。

編)メディアも人の目に触れて、感情に触れるという意味ではアートですし、違う立場で同じ市場を温めていることとは思いますよ。デジタルもアナログもいろいろありますが。。。

A)そうですね。今ではデジタルツールも普及していてアートを作ったり発表したりすることの敷居も下がっていることは確かで、新しいアーティストが参入しやすくなって市場も広がっていますよね。昔はちょっと社会に対する貢献内容が分かりにくく「アーティスト」ということを名乗ることにも、もしかしたら社会的地位が低く感じていた部分はありまして、自分でも名乗りにくかったのは確かです。

なので、単純に自分が描かせていただく絵にどう値段をつけるのかも難しくて、依頼者からも理解してもらえず時給みたいなことで考えられていた頃もあって、少し悩んだこともありました。画家として認められるまでは仕事をいただくのも難しく、こちらからお願いして描かせていただいていた頃もありますが、ペンキ塗りとしての労働力やペンキ代くらいにしかならない依頼金額でも受けざるを得ない頃もありました。

編)それはちょっとあり得ないですね!考えが遅れていると言いますか。。。

A)それでも、絵を描いて生きていることには変わりなく、別のことで仕事をしているよりは充実、と自分に言い聞かせて歯を食いしばってやっていました。そしてなんとか場数と実績を積みながら、しっかりと説明をすることと、お客様からも理解いただくための事もがんばりましたし、それでやっとお客様から正当評価によるお仕事依頼もいただけるようになって本当に嬉しいです。

絵を描く以外にも、いろいろな方法でアートを製作される方みんながそうやって正しい努力方法やノウハウで、アートに価値があることを証明していくことで、徐々に市場ができてくるものと思います。

編)楽しいだけでなく、ちゃんとクリエイターと鑑賞者の間で経済循環させる仕組みが大事ですよね。それによってクリエイターが夢を諦めず継続的に活動でき、次にどんなアートを出してくるか見るのを楽しみにできるというわけで、我々メディアの仕事かもしれませんね。

A)そうですね。でも描いたものすべてを販売したいわけではなく、アート作品=自分の子供のように産みの苦労をして世の中に送り出したものでもありますので、展示するだけという絵もあり、お金との交換を敢えて許容していない部分もあります。やっぱり経済的独立にはお金も必要ですが、何のためにアーティストとして生きていくか選択したかは経済だけではないパッションの部分でもありますので、もしかするとそれは商売畑の人たちからは、完全に理解しがたい部分かもしれませんね。。。白黒だけではない、そういう謎で覆われている部分があるのも、アーティストという性分でしょうか。

編)0から1を生み出すアーティストやクリエイターは、それでいいと思いますよ!宇宙も同じく、どうやって生まれたのか実際には誰にもわかっていませんから。

A)例えば、1600年代に活躍したフェルメールの絵画では、絵の中に描かれている被写体が誰なのか、時代考証や科学的には様々な検証がされていますが、謎がまだまだあるんですよ。黒塗りになった部分をX線で調べてみたら天使が描かれていた跡があるとか、カーテンが後世になってから塗り重ねられた様子があるとか、科学的に推定できることはあっても、実際にはどうやって現在残っている絵の状態になったか、途中で自分で塗り重ねたのか、もしくは他の誰かが塗り替えたのか、その動機や経緯などは謎に包まれたままなんですよ。

そうやって、何百年経った今でも人々の好奇心を掻き立て、様々な解釈が生まれているのですから、作品としてやアーティスト、作者としてはひとつの達成かなと思います。

編)現在まで大変な苦労もあったと思いますが、とても楽しいお話として共有下さりありがとうございます。このインタビューで後世にも残る情報として書き残すことができましたので、未来に考察される方が謎がって頭を捻る部分を少し解決しておいてしまいましたかね。。。前歯の在処は謎のままですが。

A)笑!そうですね、まだまだこれからも、皆さんの好奇心を刺激するような作品を創っていきますので、今後とも応援のほどよろしくお願い致します。

―――― 太陽の強く輝く沖縄で育ち、画家として発信し続けるその色彩鮮やかなARISA C.Millerさんの作品は、きっと未来にも輝きを放ち続けていることだろう。そして、その時代その時代に表れる鑑賞者たちによってなされる新しい解釈のように、人々の心の中に新しい宇宙が発見されていくことでしょう。